平成18年5月16日最高裁決定について。

電2たんから質問きたから答えないとなぁ。



電2たんはちょっと飛躍しすぎ。
危険なのは、この判決が、本来単純所持を処罰すべきものが、単純所持を飛び越えて、所持そのものが売買目的として売買目的として裁かれるという飛躍した判決になったこと。


本件訴訟においては児ポ法が適用されていることに着目したい。
そもそも本件で問題となっているHDDには児ポ法により単純所持さえ禁止されている代物が入っている。
所持自体は違法なのは、同法7条2項を見ればそのような趣旨の文言が記載されている通りである。
しかしこの判決は2項を適用せず、3項の売買目的を適用しているところが問題だ。

第七条  児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
    2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
    3  第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。


が、ここでなんでか判決は刑法175条のわいせつ物頒布等の罪にぶっ飛んでいる。
児ポ法を前提として175条後段の販売目的に当たるのだという。
もっとも、少なくとも175条前段のわいせつ物に当たるのは間違いない(児ポ法2条3項)。

判決文を見た限り、論理が飛躍しているというか、本人は売るつもりがない、と主張しているはず。
にもかかわらず、バックアップの作成という行為が販売、あるいは販売の予備的行為として認識されてしまったということになる。
論理的に見て無茶苦茶ではあるが、かつてわいせつ画像を記録したHDDをさして『HDDそのものがわいせつ物である!』と断じた判例もあるぐらいだし……
バックアップ作っただけで販売の準備行為とみなされるのは無茶苦茶。せめて何かしら売買にかかる外形的な行為ならまだしも、データのバックアップだけでそうみなされるのは……
そうなると、例えば大学の回線を使って児童ポルノを入手した場合(良い子はやっちゃいけませんよ?)、大学の回線がバックアップとってる場合、大学も共犯になってしまうわけで。
それって無茶苦茶ですよね。


ただ、近頃のニュースを見ていただきい。
幼い子供が次々と殺される残虐な事件が多発している。
また、児ポ法14条、16条では公的機関が児童ポルノを防止するように努力していくという方向性を示唆した文言がある。


結論としては、本件は割と特別な法令が適用された場面であると思う。私の友人などは『核兵器の販売を禁止しているのにとっつかまえて『売る目的だな!』と言ったようなものだ』と本件を例えた。なかなか面白いたとえだと思う。
少なくとも電2たんが例にあげたようなケースとは異なる。
ので、これはこれで適当な判断だったといえなくもない。
児ポ法を適用するまではいい。しかし、刑法175条は飛びすぎ。


が、今後電2たんが懸念するような事が真剣に起こりかねないと思う。というか、真剣に怖い。
裁判官の非常識な判決を集めた本も出版されているぐらいだし。割と日常茶飯事的にこのような判決が下されることも(本件は決定だけども)あるらしい。
それに、急速なデジタル化に対して立法と司法が追いついていない印象がある。
アメリカでもネットか何かについて無茶苦茶な法案が通ってしまったこともあるし、日本もそのような状況にならないようにしていくべきだろう。
なんにせよ、怖い判例ではある。
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by silver-dream | 2006-05-30 21:43 | 雑記
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